性もまた桂内閣お得意の産物なるか、咄《とつ》!

    (四)変な駄洒落《だじゃれ》

 憤慨ばかりが能ではあるまいから、一つ汽車中の駄洒落を御愛嬌《ごあいきょう》に記そう。
 元来、今回の横断旅行は、出発地を太平洋|波打際《なみうちぎわ》の大洗《おおあらい》にしようか、大洗水戸間三里の道は平々凡々だから、無駄足を運ばず水戸からにしようかという事は未定問題であったので、吾輩は大洗説を主張し、
「今夜は大洗に一泊して、沖合の夜釣をやってみようではないか」と、提議すれば、未醒子羅漢|面《づら》の眉を揚げて、
「途方もない。この風雨《しけ》に夜釣なんか出来るものか。魚は釣れず、濡鼠《ぬれねずみ》になって、大洗(大笑い)になるまでさ」と洒落のめす。吾輩も負けてはおらず、
「そんな洒落は未醒(未製)品じゃ」
「ドッコイ、来たな、駄洒落は止しに春浪《しゅんろう》」
 側《かたわら》から吉岡信敬将軍、髯面《ひげづら》を突出《つきだ》して、
「とにかく夜釣は危《あぶな》い危い。横断旅行が海底旅行になっては大変じゃ」
「ナアニ、危いもんか。そう信敬(神経)を起すな」
「アハハハ、アハハハ」と、一同は笑
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