りの金を儲けるよりは、ゴロゴロ寝ていた方が楽だといわぬばかり。どこの家《うち》を覗いてみても、一人か二人昼寝をしておらぬ家は殆んど一軒もない。男は越中|褌《ふんどし》一本、女は腰巻一枚、大の字|也《なり》になり、鼻から青提灯《あおぢょうちん》をぶら下げて、惰眠を貪《むさぼ》っている醜体《しゅうたい》は見られたものではない。試みに寝惚《ねぼ》け眼を摩《こす》って起上った彼等のある者を掴《つかま》え、
「暑いのは誰でも暑いのだ。ゴロゴロ昼寝ばかりしていずに、ドシドシ草鞋《わらじ》でも筵《むしろ》でも作って売ったらどうだ。寝ている暇に少しでも金儲けが出来るではないか」といえば、彼等は面倒臭いといわぬばかりに、
「この暑いに――、沢山《たんと》の儲《もうけ》がねえだ」と、鼻の先で笑っている。彼等の顔は全く無気力と自暴自棄との色に曇っているのだ。そのくせ、欲はなかなか深い。一寸《ちょっと》した物を買っても、すぐに暴利を貪ろうとする。実に懦弱で欲張り根性の突張った奴等ほど済度《さいど》し難い者はないのだ。
(六)髯《ひげ》将軍の一喝
一寸《ちょっと》した実例を示せば、我等が船負《ふな
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