驚くべき巨船を造り、船内の構造をすべて宮殿のごとく華麗にし、それに古代のあらゆる珍宝貨財と、百人の勇士と百人の美人とを乗せ、世界の諸国を経めぐらんとその国の港を出帆した。しかるにその船が南太平洋の波濤《なみ》にもまれているうち、大暴風にでも遭ったものか、それとも海賊に襲われたものか、まったく行方不明になって、南太平洋の波濤《はとう》は黙して語らず。
「どこにどうなってしまったか」という疑問が、数千年過ぎた今なお残っているという事。この二つの事――すなわち現時ヨーロッパのある学者仲間が、しきりに南極探検船を出しておる事と、古代文明国の一巨船が、永久の疑問を残して行方不明になった事とは、表面の観察では何等の関係もないようだ、イヤこうあらためて書けば、なんだか関係のあるように思う人があろうが、考えてみたまえ、数千年以前の物は、石の柱でも今は全く壊《くず》れてしまったほどだ、いわんや木で造った巨船においておやだ、好奇《ものずき》な学者先生いかに探しまわっても、いまさらそのような物の見つかる道理はあるまい。
しかしこの世のなかには理外の理がある、次の物語を読んだ諸君は、さてもこの世のなかには、
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