お捜しなされて……」
「そりゃ勿論死ぬまでも捜す決心だ。」と奮然として答えて、
「少し寒けがして来たが何か焚火をするものはないか。」
「どれ私が拾い集めて参りましょう。」
と東助は出て行ったが、やがて一抱えの燃料《もえぐさ》を持って立ち帰って来たので、それを焚いて温りながら、一つ一つ差しくべつつ話しをしていたが、文彦は何心のう今自分の持っている木を見るとこの月世界に見なれぬ、しかも何やら彫刻したように出来ている。
 よくよく見ると飛行船の部屋の装飾で擬《まがい》ものう篠山博士の飛行船月宮号の附属品だ。
「やッ※[#感嘆符三つ、43−下−7] 手懸りがあった。」
「え?」
「これを見い。」とそれを東助の眼の前に突き出して、
「これは叔父さんの飛行船に着けてあった飾りだ。これがあるくらいなら、どうしても叔父さんはここへ来られたものには違いないが、飛行船が壊れたため地球へ帰る事が出来ないでここにそのまま止まっていらっしゃるんだ。難有い。これこそ天の与えだ。」
「じゃいよいよ大旦那様はここにお出でなされましたに違いねえ。さあそれじゃ一刻も早くお在処《ありか》を探し出して……」
「それにしても方角が判らないから、一まずこの木の落ちていた附近を検べて見たら、も少し何か判然した手懸りがあるかも知れない。」
と東助を先に立てて、先刻焚木を集めた処に行ったが、他に別段変った事もない。向うに出ようとその横の森を通ると、やや広い空地に出た。
「やッ飛行船だ※[#感嘆符三つ、44−上−4]」
「月宮号※[#感嘆符三つ、44−上−5]」
 二人は驚きの余り思わず声を発した。見よそこには無惨にも日本科学の粋を集めた篠山博士の飛行船月宮号は、微塵となって散らばっている。
 東助はこの様を見るより声を挙げて泣きながら、
「若旦那様、この様子じゃもう篠山の旦那様は、とても助かりっこはありません、この様子を申し上げたら、さぞ嬢さまは吃驚して気絶してお終いなさるでしょう。若旦那様どうしたらようがしょう。」
「しかしまだそう落胆するには及ばない。如何にも飛行船はこの通り壊れて終っているけれど、叔父さんのお姿が見えない処を見れば、どこか他に安全な処におらるるに違いない。その上助手の杉田も一伴《いっしょ》だのに、二人ながら居ないとすればきっと、この附近に逃れておらるるだろう。」
と力をつけながら、
「いよいよ
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