旬《しよじゆん》横濱《よこはま》の某《ぼう》商船會社《しやうせんくわいしや》より浪《なみ》の江丸《えまる》といへる一|大《だい》帆走船《ほまへせん》を購《あがな》ひ、密《ひそ》かに糧食《りようしよく》、石炭《せきたん》、氣發油《きはつゆう》、※[#「渦」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、46−5]卷蝋《くわけんらう》、鋼索《こうさく》、化學用《くわがくよう》の諸《しよ》劇藥《げきやく》、其他《そのほか》世人《せじん》の到底《たうてい》豫想《よさう》し難《がた》き幾多《いくた》の材料《ざいりよう》を蒐集中《しうしふちう》なりしが、何時《いつ》とも吾人《われら》の氣付《きづ》かぬ間《ま》に其《その》姿《すがた》を隱《かく》しぬ。櫻木大佐《さくらぎたいさ》が其《その》姿《すがた》を隱《かく》すと共《とも》にかの帆走船《ほまへせん》も其《その》停泊港《ていはくかう》に在《あ》らずなり、併《あは》せて大佐《たいさ》が年來《ねんらい》の部下《ぶか》として神《かみ》の如《ごと》く親《おや》の如《ごと》くに氏《し》に服從《ふくじゆう》せる三十七|名《めい》の水兵《すゐへい》も其《その》姿《すがた》を失
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