》には十一|時《じ》半《はん》を報《ほう》ずる七|點鐘《てんしよう》が響《ひゞ》いて、同時《どうじ》にボー、ボー、ボーツと恰《あだか》も獅子《しゝ》の吼《ほ》ゆるやうな※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]笛《きてき》の響《ひゞき》、それは出港《しゆつかう》の相圖《あひづ》で、吾等《われら》の運命《うんめい》を托《たく》する弦月丸《げんげつまる》は、遂《つひ》に徐々《じよ/″\》として進航《しんかう》をはじめた。

    第四回 反古《ほご》の新聞《しんぶん》
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葉卷烟草《シーガレツト》――櫻木海軍大佐の行衞――大帆走船と三十七名の水夫――奇妙な新體詩――秘密の大發明――二點鐘カヽン々々
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 灣口《わんこう》を出《い》づるまで、私《わたくし》は春枝夫人《はるえふじん》と日出雄少年《ひでをせうねん》とを相手《あひて》に甲板上《かんぱんじやう》に佇《たゞず》んで、四方《よも》の景色《けしき》を眺《なが》めて居《を》つたが、其内《そのうち》にネープルス[#「ネープルス」に二重傍線]港《かう》の燈光《ともしび》も微《かす》かになり、夜寒《
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