いが、其事《そのこと》は心配《しんぱい》するには及《およ》ばぬよ、奧樣《おくさま》も日出雄少年《ひでをせうねん》も、私《わたし》が生命《いのち》にかけて保護《ほご》して上《あ》げる。』と言《い》つたが、亞尼《アンニー》は殆《ほと》んど絶望《ぜつぼう》極《きはま》りなき顏《かほ》で
『あゝ、もう無益《だめ》だよ/\。』とすゝり泣《な》きしながら、むつく[#「むつく」に傍点]と立上《たちあが》り
『神樣《かみさま》、佛樣《ほとけさま》、奧樣《おくさま》と日出雄樣《ひでをさま》の御身《おんみ》をお助《たす》け下《くだ》さい。』と叫《さけ》んだ儘《まゝ》、狂氣《きやうき》の如《ごと》くに走《はし》り去《さ》つた。
丁度《ちやうど》此時《このとき》、休憩所《きうけいしよ》では乘船《のりくみ》の仕度《したく》も整《とゝの》つたと見《み》へ、濱島《はまじま》の頻《しき》りに私《わたくし》を呼《よ》ぶ聲《こゑ》が聽《きこ》えた。
第三回 怪《あやし》の船《ふね》
[#ここから5字下げ]
銅鑼の響――ビール樽の船長――白色の檣燈――古風な英國人――海賊島の奇聞――海蛇丸
[#ここで字下げ終わり
前へ
次へ
全603ページ中42ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
押川 春浪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング