珍《めづ》らしく音樂會《おんがくくわい》の催《もよう》さるゝ由《よし》で、幾百人《いくひやくにん》の歐米人《をうべいじん》は老《おい》も若《わか》きも其處《そこ》に集《あつま》つて、狂氣《きやうき》のやうに騷《さは》いで居《を》る。禿頭《はげあたま》の佛蘭西《フランス》の老紳士《らうしんし》が昔日《むかし》の腕前《うでまへ》を見《み》せて呉《く》れんとバイオリン[#「バイオリン」に傍線]を採《と》つて彈《ひ》くか彈《ひ》かぬに歌《うた》の曲《きよく》をハツタと忘《わす》れて、頭《あたま》撫《な》で/\罷退《まかりさが》るなど隨分《ずゐぶん》滑※[#「(禾+尤)/上/日」、62−10]的《こつけいてき》な事《こと》もあるが、大概《たいがい》は腕《うで》に覺《おぼ》えの歐米人《をうべいじん》の事《こと》とて、いづれも得意《とくい》の曲《きよく》を調《しら》べては互《たがひ》に天狗《てんぐ》の鼻《はな》を高《たか》めて居《を》る。私《わたくし》が春枝夫人《はるえふじん》と此《この》席《せき》に列《つらな》つた時《とき》には丁度《ちやうど》ある年増《としま》の獨逸《ドイツ》婦人《ふじん》がピア
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