であらう。有力《いうりよく》なる軍器《ぐんき》と云《い》へば、非常《ひじやう》なる爆發力《ばくはつりよく》を有《いう》する彈丸《だんぐわん》の種類《しゆるい》かしら、それとも、一種《いつしゆ》の魔力《まりよく》を有《いう》する大砲《たいほう》の發明《はつめい》であらうか。イヤ/\、大佐《たいさ》の口吻《くちぶり》では、もつと有力《いうりよく》なる發明《はつめい》であらうと、樣々《さま/″\》の想像《さうぞう》を描《えが》いて居《を》る内《うち》に、遂《つひ》に到着《たうちやく》したのは、昨曉《さくぎよう》、大佐《たいさ》の後影《うしろかげ》をチラリと認《みと》めた灣中《わんちう》の屏風岩《べうぶいわ》の邊《へん》、此處《こゝ》で、第一《だいいち》に不思議《ふしぎ》に感《かん》じたのは、此《この》屏風形《べうぶがた》の岩《いわ》は、遠方《えんぽう》から見《み》ると、只《たゞ》一枚《いちまい》丈《だ》け孤立《こりつ》して居《を》るやうだが、今《いま》、其《その》上《うへ》へ登《のぼ》つて見《み》ると、三方《さんぽう》四方《しほう》に同《おな》じ形《かたち》の岩《いわ》がいくつも重《かさな》り合《あ》つて、丁度《ちやうど》羅馬《ローマ》古代《こだい》の大殿堂《テンプル》の屋根《やね》のやうな形《かたち》をなし、其《その》下《した》は疑《うたがひ》もなき大洞窟《おほほらあな》で、逆浪《ぎやくらう》怒濤《どたう》が隙間《すきま》もなく四邊《しへん》に打寄《うちよ》するに拘《かゝは》らず、洞窟《ほらあな》の中《なか》は極《きわ》めて靜謐《せいひつ》な樣子《やうす》で、吾等《われら》の歩《あゆ》む毎《たび》に、其《その》跫音《あしおと》はボーン、ボーン、と物凄《ものすご》く響《ひゞ》き渡《わた》つた。
屏風岩《べうぶいわ》の上《うへ》を二十ヤードばかり進《すゝ》むと、正面《しやうめん》に壁《かべ》のやうに屹立《つゝた》つたる大巖石《だいがんせき》の中央《ちゆうわう》に、一個《いつこ》の鐵門《てつもん》があつて、其《その》鐵門《てつもん》の前《まへ》には、武裝《ぶさう》せる當番《たうばん》の水兵《すいへい》が嚴肅《げんしゆく》に立《た》つて居《を》つたが、大佐等《たいさら》の姿《すがた》を見《み》るより、恭《うやうや》しく敬禮《けいれい》を獻《さゝ》げた。近《ちか》づいて見《み》ると、鐵門《てつもん》の上部《じやうぶ》には、岩《いわ》に刻《きざ》まれて「秘密《ひみつ》造船所《ざうせんじよ》」の五|字《じ》が意味《ゐみ》あり氣《げ》に現《あら》はれて居《を》つた。
第十五回 電光艇《でんくわうてい》
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鼕々たる浪の音――投鎗に似た形――三尖衝角――新式魚形水雷――明鏡に映る海上海底の光景――空氣製造器――鐵舟先生の詩
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武村兵曹《たけむらへいそう》は腰《こし》なる大鍵《おほかぎ》を索《さぐ》つて、鐵門《てつもん》の扉《とびら》と開《ひら》いた。
『此處《こゝ》が秘密《ひみつ》の塲所《ばしよ》の入口《いりくち》です。』と櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》は私《わたくし》を顧見《かへりみ》た。此時《このとき》はまだ工事《こうじ》も始《はじ》まらぬと見《み》へ、例《れい》の鐵《てつ》の響《ひゞき》も聽《きこ》えず、中《なか》はシーンとして、凄《すご》い程《ほど》物靜《ものしづ》かだ。私《わたくし》は二人《ふたり》の案内《あんない》に從《したが》つて、鐵門《てつもん》を※[#「穴かんむり/兪」、第4水準2−83−17]《くゞ》つたが、はじめ十|歩《ぽ》ばかりの間《あひだ》は身《み》を屈《かゞ》めて歩《あゆ》む程《ほど》で、稍《や》や廣《ひろ》くなつたと思《おも》ふと、直《す》ぐ前《まへ》には、岩《いわ》に刻《きざ》んで設《まう》けられた險《けわ》しい階段《かいだん》がある、其《その》階段《かいだん》を降《お》り盡《つく》すと、眞暗《まつくら》になつて、恰《あだか》も墜道《とんねる》のやうに物淋《ものさび》しい道《みち》を、武村兵曹《たけむらへいそう》が即座《そくざ》に點《てん》じた球燈《きゆうとう》の光《ひかり》に照《てら》して、右《みぎ》に折《を》れ、左《ひだり》に轉《てん》じて、凡《およ》そ百四五十ヤードも進《すゝ》むと、岩石《がんぜき》が前《まへ》と後《うしろ》に裂《さ》け離《はな》れて、峽《けう》をなし、其《その》間《あひだ》を潮《うしほ》が矢《や》の如《ごと》く洞外《どうぐわい》から流《なが》れ入《い》り、流《なが》れ去《さ》つて居《を》る。峽上《けいじやう》には一筋《ひとすぢ》の橋《はし》があつて、それを渡《わた》ると又《ま》た鐵《てつ》の扉《とびら》だ。武村兵曹《たけむらへいそ
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