とうやう》の。
  空《そら》を劈《つんざ》く日《ひ》の光《ひかり》。 海《うみ》に潜《ひそ》める大軍器《だいぐんき》※[#感嘆符三つ、53−2]
[#ここで字下げ終わり]

と言《い》ふ樣《やう》な文句《もんく》で、隨分《ずゐぶん》奇妙《きめう》な、恐《おそ》らくは新派《しんぱ》先生《せんせい》一派《いつぱ》から税金《ぜいきん》を徴收《とり》に來《き》さうな詩《し》ではあつたが、月《つき》明《あきらか》に、風《かぜ》清《きよ》き※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]船《きせん》の甲板《かんぱん》にて、大佐《たいさ》軍刀《ぐんたう》の柄《つか》を後部《うしろ》に廻《まは》し、其《その》朗々《らう/\》たる音聲《おんせい》にて、誦《しよう》じ來《きた》り誦《しよう》し去《さ》つた時《とき》には、私《わたくし》は思《おも》はず快哉《くわいさい》を※[#「口+斗」、53−6]《さけ》んだよ。勿論《もちろん》、其時《そのとき》は別《べつ》に心《こゝろ》にも留《と》めなかつたが、今《いま》になつて初《はじ》めてそれと[#「それと」に傍点]思《おも》ひ當《あた》る節《ふし》の無《な》いでもない。
何《なに》は兎《と》もあれ此《この》反古《ほご》新聞《しんぶん》の記事《きじ》によると、櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》が此《この》秘密《ひみつ》なる旅行《りよかう》を企《くはだ》てたのは既《すで》に一|年《ねん》半《はん》も以前《いぜん》の事《こと》で、前《まへ》にもいふ通《とう》り私《わたくし》がまだ亞米利加《アメリカ》の[#「亞米利加《アメリカ》の」は底本では「亞利利加《アメリカ》の」]大陸《たいりく》を漫遊《まんゆう》して居《を》つた時分《じぶん》の事《こと》で、其後《そのゝち》、私《わたくし》は絶《た》えず旅《たび》から旅《たび》へと遍歴《へんれき》して居《を》つたので、此《この》珍聞《ちんぶん》を知《し》つたのも今《いま》が初《はじめ》てであるが、あゝ、大佐《たいさ》は其後《そのゝち》如何《いか》にしたであらう、遂《つひ》に其《その》目的《もくてき》を達《たつ》して再《ふたゝ》び日本《につほん》へ歸《かへ》つたであらうか。櫻木海軍大佐《さくらぎかいぐんたいさ》は其《その》性質《せいしつ》からいつても、かゝる擧動《きよどう》に出《い》でたのは大《おほい》に期《き
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