》を怪物《ばけもの》だと思《おも》つて居《ゐ》るんでせうよ。』と叫《さけ》んだが全《まつた》く左樣《さう》かも知《し》れぬ 暫時《しばし》は其處此處《そここゝ》の木《こ》の間《ま》かくれに、脊《せ》を高《たか》くし、牙《きば》を鳴《な》らして此方《こなた》を睨《にら》んで居《を》つたが、それも僅《わづ》かの間《あひだ》で、獅子《しゝ》は百獸《ひやくじう》の王《わう》と呼《よ》ばるゝ程《ほど》あつて、極《きわ》めて猛勇《まうゆう》なる動物《どうぶつ》で、此時《このとき》一聲《いつせい》高《たか》く叫《さけ》んで、三頭《さんとう》四頭《しとう》鬣《たてがみ》を鳴《な》らして鐵車《てつしや》に飛掛《とびかゝ》つて來《き》た。鐵車《てつしや》は其樣《そん》な事《こと》ではビクともしない、反對《はんたい》に獸《じう》を彈飛《はじきとば》すと、百獸《ひやくじう》の王樣《わうさま》も團子《だんご》のやうに草《くさ》の上《うへ》を七顛八倒《しちてんばつたう》。吾等《われら》一同《いちどう》はドツと笑《わら》つた。虎《とら》は比較的《ひかくてき》愚《おろか》な動物《どうぶつ》で、憤然《ふんぜん》身《み》を躍《をど》らして、鐵車《てつしや》の前方《ぜんぽう》から飛付《とびつ》いたから堪《たま》らない、恐《おそ》る可《べ》き旋廻圓鋸機《せんくわいえんきよき》のために、四肢《しゝ》や、腹部《ふくぶ》を引裂《ひきさ》かれて、苦鳴《くめい》をあげて打斃《うちたを》れた。最《もつと》も狡猾《こうくわつ》なるは猛狒《ゴリラ》である。古木《こぼく》の樣《やう》な醜《みにく》き腕《うで》を延《のば》して、鐵車《てつしや》の檻《おり》を引握《ひきつか》み、力任《ちからまか》せに車《くるま》を引倒《ひきたほ》さんとするのである。猛犬稻妻《まうけんいなづま》は猛然《まうぜん》として其《その》手《て》に噛《か》み付《つ》いた。
『此奴《こやつ》、生意氣《なまいき》!。』と水兵《すいへい》は叫《さけ》んだ。
『それ發射《はつしや》!。』と私《わたくし》が叫《さけ》ぶ瞬間《しゆんかん》、日出雄少年《ひでをせうねん》は隙《すか》さず三發《さんぱつ》まで小銃《せうじう》を發射《はつしや》したが、猛狒《ゴリラ》は平氣《へいき》だ。武村兵曹《たけむらへいそう》大《おほい》に怒《いか》つて
『此《この》畜類《ちくるゐ》、ま
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