そ》んで居《を》ればよいのです。』といふ。大佐《たいさ》の心《こゝろ》では、吾等《われら》兩人《ふたり》が意外《いぐわい》の椿事《ちんじ》の爲《た》めに、此樣《こん》な孤島《はなれじま》へ漂着《へうちやく》して、之《これ》から或《ある》年月《ねんげつ》の間《あひだ》、飛《と》ぶに羽《はね》なき籠《かご》の鳥《とり》、空《むな》しく故國《ここく》の空《そら》をば眺《なが》めて暮《くら》すやうな運命《うんめい》になつたのをば、寧《むし》ろ不憫《ふびん》と思《おも》つて居《を》るのであらう。けれど私《わたくし》は默《だま》つては居《を》られぬ。
『イヤ、左樣《さう》では無《な》いです、若《も》し秘密造船所《ひみつざうせんじよ》の仕事《しごと》に私《わたくし》の必要《ひつえう》が無《な》いなら、料理方《れうりかた》でもやります/\。』と决然《けつぜん》言放《いひはな》つと、此時《このとき》まで食卓《しよくたく》の一方《いつぽう》に、默《だま》つて私《わたくし》の顏《かほ》を眺《なが》めて居《を》つた武村兵曹《たけむらへいそう》は、突然《とつぜん》顏《かほ》を突出《つきだ》して。
『うむ、恰好事《よいこと》がある/\。』と例《れい》の頓狂聲《とんきようごゑ》
『貴方《あなた》に料理方《れうりかた》だなんて、其樣《そん》な馬鹿《ばか》らしい事《こと》が出來《でき》ますか。』と言《い》ひかけて櫻木大佐《さくらぎたいさ》に眼《まなこ》を轉《てん》じ
『大佐閣下《たいさかくか》、好《かう》機會《きくわい》です、例《れい》の一件《いつけん》、此《この》島《しま》に紀念塔《きねんたう》を建《た》てる事《こと》を依頼《いらい》しては如何《どう》でせう。』
大佐《たいさ》はポンと掌《たなごゝろ》[#ルビの「たなごゝろ」は底本では「たなじゝろ」]を叩《たゝ》いた。
『其事《そのこと》! 余《よ》も丁度《ちやうど》考《かんが》へて居《を》つた處《ところ》だ。』と私《わたくし》に向《むか》ひ
『若《も》し、君《きみ》が強《し》いて或《ある》仕事《しごと》を望《のぞ》み玉《たま》ふならば。』と徐《おもむ》ろに語《かた》り出《だ》す大佐《たいさ》の言《げん》によると。元來《ぐわんらい》此《この》孤島《はなれじま》は前《まへ》にも云《い》ふ樣《やう》に、未《ま》だ、世界輿地圖《せかいよちづ》の表面《ひや
前へ 次へ
全302ページ中165ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
押川 春浪 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング