より洞中《どうちゆう》の造船所《ぞうせんじよ》内《ない》を殘《のこ》る隈《くま》なく見物《けんぶつ》したが、ふと見《み》ると、洞窟《どうくつ》の一隅《いちぐう》に、岩《いわ》が自然《しぜん》に刳《えぐ》られて、大《だい》なる穴倉《あなぐら》となしたる處《ところ》、其處《そこ》に、嚴重《げんぢう》なる鐵《てつ》の扉《とびら》が設《まう》けられて、扉《とびら》の表面《ひやうめん》には黄色《きいろ》のペンキで「海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》の生命《せいめい》」なる數字《すうじ》が記《しる》されてあつた。
『之《これ》は何《なん》ですか。』と私《わたくし》が問《と》ふと大佐《たいさ》は言葉《ことば》靜《しづ》かに
『此《この》倉庫《さうこ》には前《ぜん》申《まう》した、海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》の動力《どうりよく》の原因《げんいん》となるべき重要《ぢうえう》の化學藥液《くわがくやくえき》が、十二の樽《たる》に滿《みた》されて藏《をさ》められてあるのです。實《じつ》に此《この》藥液《やくえき》の樽《たる》こそ、海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》の生命《せいめい》ともいふべき物《もの》です。』と答《こた》へた。此《この》他《ほか》猶《な》ほ、見《み》もし聞《きゝ》もしたき事《こと》は澤山《たくさん》あつたが、時刻《じこく》は既《すで》に八|時《じ》に近《ちか》く、艇《てい》の邊《へん》には既《すで》に夥多《あまた》の水兵《すいへい》が集《あつま》つて來《き》て、最早《もはや》工作《こうさく》の始《はじ》まる模樣《もやう》、且《か》つは、海岸《かいがん》の家《いへ》には、日出雄少年《ひでをせうねん》は只《たゞ》一人《ひとり》で定《さだ》めて淋《さび》しく、待兼《まちかね》て居《を》る事《こと》だらうと、思《おも》つたので、私《わたくし》は大佐《たいさ》に別《わかれ》を告《つ》げて、此處《こゝ》を立去《たちさ》る事《こと》に决《けつ》した。たゞ此《この》秘密造船所《ひみつぞうせんじよ》を出《い》づる前《まへ》に、一言《ひとこと》聽《き》きたきは、海底戰鬪艇《かいていせんとうてい》の竣成《しゆんせい》の期日《きじつ》と、此《この》艇《てい》の如何《いか》に命名《めいめい》されるかとの點《てん》である。大佐《たいさ》は私《わたくし》の問《とひ》に對《たい》して、悠々《ゆう/
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