、さて此後《このゝち》は如何《いか》になさる御决心《ごけつしん》です。』
决心《けつしん》如何《いかん》といふのは、吾等《われら》兩人《りようにん》かゝる絶島《ぜつたう》に漂着《へうちやく》した今《いま》、無理《むり》にも本國《ほんごく》へ皈《かへ》りたいか、又《また》は或《ある》便宜《べんぎ》を得《う》るまで、大佐等《たいさら》と此《この》島《しま》に滯在《たいざい》する覺悟《かくご》があるかとの問《とひ》だと私《わたくし》は考《かんが》へたので、無論《むろん》、一日《いちにち》も速《すみや》かに日本《につぽん》へ皈《かへ》りたいのは山々《やま/\》だが、前後《ぜんご》の事情《じじやう》を察《さつ》すると、今《いま》此人《このひと》に向《むか》つて、其樣《そん》な我儘《わがまゝ》は言《い》はれぬのである。で私《わたくし》は簡單《かんたん》に
『たゞ天命《てんめい》と、大佐閣下《たいさかくか》とに、吾等《われら》の運命《うんめい》を委《ゆだ》ぬるのみです。』と答《こた》へると、大佐《たいさ》は暫時《しばし》小首《こくび》を傾《かたむ》けたが
『然《しか》らば、君等《きみら》は或《ある》時期《とき》まで、此《この》島《しま》に滯在《たいざい》せねばなりません。』と斷乎《だんこ》と言放《いひはな》つた。
私《わたくし》は默《だま》つて點頭《うなづ》いた。
大佐《たいさ》は言《げん》をつゞけ
『實《じつ》に致《いた》し方《かた》が無《な》いのです。勿論《もちろん》君《きみ》が御决心《ごけつしん》で、運命《うんめい》を全《まつた》く天《てん》に任《まか》せて、再《ふたゝ》び小端艇《せうたんてい》で、印度洋《インドやう》の波《なみ》を越《こ》えて、本國《ほんごく》へお皈《かへ》りにならうと仰《お》つしやれば、仕方《しかた》がありませんが、私《わたくし》は决《けつ》して、其樣《そん》な無法《むほふ》な事《こと》を望《のぞ》みません、其他《そのた》の手段《しゆだん》では、到底《とうてい》今日《けふ》や明日《あす》に、此《この》島《しま》を出發《しゆつぱつ》する方法《てだて》もありませんから、止《や》むを得《え》ず、或《ある》時期《とき》までは、吾等《われら》の一行《いつかう》と共《とも》に、此《この》絶島《ぜつたう》に御滯在《ごたいざい》の外《ほか》はありません。』
『それは覺悟
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