たる光《ひかり》を放《はな》つと、聽《き》く日出雄少年《ひでをせうねん》は、プイと躍立《とびた》つて。
『眞個《ほんとう》に/\、海軍《かいぐん》の叔父《おぢ》さんが海賊船《かいぞくせん》を退治《たいぢ》するなら、私《わたくし》は敵《てき》の大將《たいしやう》と勝負《しようぶ》を决《けつ》しようと思《おも》ふんです。』
『其處《そこ》だツ、日本男兒《につぽんだんじ》の魂《たましひ》は――。』と木像《もくぞう》のやうに默《だま》つて居《を》つた武村兵曹《たけむらへいそう》は不意《ふい》に叫《さけ》んだ。
『其時《そのとき》は、此《この》武村新八郎《たけむらしんぱちらう》が先鋒《せんぽう》ぢや/\。』と威勢《いせい》よくテーブルの上《うへ》を叩《たゝ》き廻《まわ》すと、皿《さら》は跳《をど》つて、小刀《ナイフ》は床《ゆか》に落《お》ちた。それから、例《れい》の魔《ま》の日《ひ》魔《ま》の刻《こく》の一件《いつけん》に就《つ》いては、水兵《すいへい》一同《いちどう》は私《わたくし》と同《おな》じ樣《やう》に、無※[#「(禾+尤)/上/日」、160−9]《ばか》な話《はなし》だと笑《わら》つてしまつたが、獨《ひとり》櫻木大佐《さくらぎたいさ》のみは笑《わら》はなかつた。無論《むろん》、縁起的《えんぎてき》には、其樣《そん》な事《こと》は信《しん》ぜられぬが、かの亞尼《アンニー》とかいへる老女《らうぢよ》は、何《なに》かの理由《わけ》で、海賊船《かいぞくせん》が弦月丸《げんげつまる》を狙《ねら》つて居《を》る事《こと》をば、豫《あらかじ》め知《し》つて居《を》つたのかも知《し》れぬ。それが或《ある》事情《じじやう》の爲《た》めに明言《めいげん》する事《こと》も出來《でき》ず、さりとて主家《しゆか》の大難《だいなん》を知《し》らぬ顏《かほ》に打※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、161−2]《うちすぎ》るにも忍《しの》びで、かくは縁起話《えんぎばなし》に托言《かこつ》けて、其《その》夜《よ》の出發《しゆつぱつ》を止《とゞ》めたのかも知《し》れぬ。と語《かた》つた。成程《なるほど》斯《か》う聽《き》いて見《み》れば、私《わたくし》も思《おも》ひ當《あた》る節《ふし》の無《な》いでもない。また、海賊船《かいぞくせん》海蛇丸《かいだまる》の一條《いちじやう》については、席上
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