、其間《そのま》に、大佐《たいさ》より命令《めいれい》のあつた吾等《われら》の居室《ゐま》の準備《じゆんび》も出來《でき》たので、其處《そこ》に導《みちび》かれ、久々《ひさ/″\》にて寢臺《ねだい》の上《うへ》へ横《よこたは》つた。はじめの間《あひだ》は日出雄少年《ひでをせうねん》も私《わたくし》も互《たがひ》に顏《かほ》を見合《みあは》せては此《この》不思議《ふしぎ》なる幸運《かううん》をよろこび、大佐等《たいさら》の懇切《こんせつ》なる待遇《もてなし》を感謝《かんしや》しつゝ、いろ/\と物語《ものがた》つて居《を》つたが、何時《いつ》か十|數日《すうにち》以來《いらい》の烈《はげ》しき疲勞《つかれ》の爲《た》めに、知《し》らず/\深《ふか》き夢《ゆめ》に落《お》ちた。
第十三回 星影《ほしかげ》がちら/\
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歡迎《ウエルカム》――春枝夫人は屹度死にません――此新八が先鋒ぢや――浪の江丸の沈沒――此島もなか/\面白いよ――三年の後
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それから幾時間《いくじかん》眠《ねむ》つたか知《し》らぬが、不意《ふゐ》に私《わたくし》の枕邊《まくらもと》で
『サア、賓客《おきやくさん》、もう暗《くら》くなりましたぜ、大佐閣下《たいさかくか》もひどくお待兼《まちかね》で、それに、夕食《ゆふしよく》の御馳走《ごちさう》も悉皆《すつかり》出來《でき》て、料理方《れうりかた》の浪三《なみざう》めが、鳥《とり》の丸燒《まるやき》が黒焦《くろこげ》になるつて、眼玉《めだま》を白黒《しろくろ》にして居《ゐ》ますぜ。』と大聲《おほごゑ》に搖醒《ゆりさま》すものがあるので、愕《おどろ》いて目《め》を醒《さま》すと、此時《このとき》日《ひ》は全《まつた》く暮《く》れて、部室《へや》の玻璃窓《がらすまど》を透《たう》して、眺《なが》むる海《うみ》の面《おも》には、麗《うる》はしき星影《ほしかげ》がチラ々々と映《うつ》つて居《を》つた。
私《わたくし》を呼醒《よびさま》したのは快活《くわいくわつ》なる武村兵曹《たけむらへいそう》であつた。其《その》右手《めて》に縋《すが》つて、可憐《かれん》なる日出雄少年《ひでをせうねん》はニコ/\しながら
『叔父《おぢ》さん、私《わたくし》はもう顏《かほ》を洗《あら》つて來《き》ましてよ。』と、睡醒《ねざめ》
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