かたち》で、其《その》面積《めんせき》も餘程《よほど》廣《ひろ》い樣《やう》だ。弦月丸《げんげつまる》の沈沒《ちんぼつ》以來《いらい》十|數日間《すうにちかん》は、青《あを》い空《そら》と、青《あを》い波《なみ》の外《ほか》は何《なに》一つも眺《なが》めた事《こと》のない吾等《われら》が、不意《ふい》に此《この》島《しま》を見出《みいだ》した時《とき》の嬉《うれ》しさ、翅《つばさ》あらば飛《と》んでも行《ゆ》きたき心地《こゝち》、けれど悲《かな》しや、心付《こゝろつ》くと吾《わが》端艇《たんてい》には帆《ほ》もなく、櫂《かい》も無《な》い。近《ちか》い樣《やう》でも海上《かいじやう》の三|里《り》は容易《ようゐ》でない、無限《むげん》の大海原《おほうなばら》に漂《たゞよ》つて居《を》つた間《あひだ》こそ、島《しま》さへ見出《みいだ》せば、直《たゞ》ちに助《たす》かる樣《やう》に考《かんが》へて居《を》つたが、仲々《なか/\》左樣《さう》は行《ゆ》かぬ。まご/\して居《ゐ》れば再《ふたゝ》び何處《どこ》へ押流《おしなが》されてしまうかも分《わか》らぬ。今《いま》は躊躇《ちうちよ》しては居《を》られぬ塲合《ばあひ》、私《わたくし》は突如《いきなり》眞裸《まつぱだか》になつて海中《かいちう》へ跳込《をどりこ》んだ[#「跳込《をどりこ》んだ」は底本では「跳込《をどりこ》んた」]、隨分《ずいぶん》覺束《おぼつか》ない事《こと》だが、泳《およ》ぎながらに、端艇《たんてい》をだん/″\と島《しま》の方《ほう》へ押《お》して行《ゆ》かんとの考《かんがへ》、艇中《ていちう》からは日出雄少年《ひでをせうねん》、楓《かへで》のやうな手《て》で頻《しき》りに波《なみ》を掻分《かきわ》けて居《を》る、此樣《こんな》事《こと》で、舟《ふね》は動《うご》くか動《うご》かぬか、其《その》遲緩《まぬる》さ。けれど吾等《われら》の勞力《らうりよく》は遂《つひ》に無益《むえき》とならで、漸《やうやく》の事《こと》で島《しま》に着《つ》いたのは、かれこれ小半日《こはんにち》も※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、134−5]《すぎ》てから後《あと》の事《こと》、僅《わづ》か三里《さんり》の波《なみ》の上《うへ》を、六時間《ろくじかん》以上《いじやう》とは甚《はなは》だ遲《おそ》い速力《そくりよく》
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