は無辺にせまりてものみなの隈のふるへか
わが肉は酸敗の草にそまりて滄々としづみゆきたり
しらず いづこに敵のかくるや
風の流れてはげしきなかを
黒 ひかり病む鑿地砲台
黒竜江のほとりにて
アムールは凍てり
寂としていまは声なき暗緑の底なり
とほくオノン インゴダの源流はしらず
なにものか※[#「厂+萬」、第3水準1−14−84]げしさのきはみ澱み
止むに止まれぬ感情の牢として黙だせるなり
まこと止むに止まれぬ切なさは
一望の山河いつさいに蔵せり
この日凛烈冬のさなか
ひかり微塵となり
風沈み
滲みとほる天の青さのみわが全身に打ちかかる
ああ指呼の間の彼の枯れたる屋根屋根に
なんぞわがいただける雲のゆかざる
歴史の絶えざる転移のままに
愴然と大河のいとなみ過ぎ来たり
アムールはいま足下に凍てつけり
大いなる
さらに大いなる解氷の時は来れ
我が韃靼の海に春近からん
人傑地霊
巻きあげる竜巻を右とみれば
きまつて鬼《クエイ》の仕業と信じ
左に巻き上がる時
これこそ神《シエン》の到来といふ
かかる無辜にして原始なる民度の
その涯のはて
西はゴビより陰山の北を駆つて
つねに移
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