ろとなりふき晒されて
それこそどんな暗黒にも閉ぢることはないだらう
別々でありながら身内に燃え燃えながらも離れてゆくといふ
おかしなさういふたぐひの眼だ
せつかく此処まで来たところがこれでは説明がつきかねる
これをしも不誠実だと責めるまへに
だがいまは言ふな
おまへが何を共力しようとするのかそれも知らぬ
おれは世界が何故このやうにおれを報いたかを考へてみるのだ
宇宙犬の夢をもつためには
しばしばその夢からさへ脱がれようとする
だがいぶかしげにおれをうながす
憫みともつかぬだんまりが反つておまへの常套なのか
どうやらそれも怖ろしい眼の裏側を糾問するためのことらしい
がたんと重いぶれーきで停り
わづかな喧騒の後はまたもとの静けさに帰つた
いやおれはこのまゝでいいのだ
辛いやつを口になめては
歌をやるすべもない
左様なら
いちめんの斑雪《はだれ》に煤がながれこんで
黒い車輛の列からはみだしてる
途方もない
陸のつゞきさ
煉瓦台にて
水沫《しぶき》を擾して抛物線の、刻薄を伝つて。
空に痙攣れて 船体《ハル》の悲しみが沈むでゆく。
燃え尽きた煉瓦台に身を打ちなげて己は、薊の花と落日と、
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