また茫然として店へ帰って来るのであったが、やがてともよ[#「ともよ」に傍点]のそうした行為も止んで仕舞った。
 此頃《このごろ》では、ともよ[#「ともよ」に傍点]は湊を思い出す度に
「先生は、何処《どこ》かへ越して、また何処かの鮨屋へ行ってらっしゃるのだろう――鮨屋は何処にでもあるんだもの――」
 と漠然と考えるに過ぎなくなった。



底本:「岡本かの子全集5」ちくま文庫、筑摩書房
   1993(平成5)年8月24日第1刷発行
初出:「文芸」
   1939(昭和14)年1月号
入力・校正:鈴木厚司
1999年3月8日公開
2007年8月28日修正
青空文庫作成ファイル:
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