……先生……小初先生……ばか……ばか……」
風の加った雨脚《あまあし》の激しい海の真只中《まっただなか》だ。もはや、小初の背後の波間には追って来る一人の男の姿も見えない。灰色の恍惚からあふれ出る涙をぼろぼろこぼしながら、小初はどこまでもどこまでも白濁無限の波に向って抜き手を切って行くのであった。
[#地から1字上げ](昭和十一年九月)
底本:「ちくま日本文学全集 岡本かの子」筑摩書房
1992(平成4)年2月20日第1刷発行
1998(平成10)年3月15日第2刷発行
底本の親本:「岡本かの子全集」冬樹社
1974(昭和49)年〜1978(昭和53)年
初出:「文芸」
1936(昭和11)年9月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:土屋隆
校正:門田裕志、小林繁雄
2007年8月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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