も「朧」の骨子を立ててゐる。上田秋成の雨月物語に至つて「朧」の美は極致に達する。
日本女性には「朧」のところがあつて性格美を潤澤ならしめてゐる。「いはぬはいふにいや増る」といふ氣質にして、もし、正當的確な眞情の表現をなし得るなら、これこそ最も日本女性の氣質的好標であらう。
近世獨逸浪漫派の驍將ノヴアーリスが次のやうなことをいつてゐる。「光と闇と交錯していちじるき明暗や色彩を生むとき、誰か好みてその薄明の中を徨彷《さまよ》はざるものありや」と、若々しき心に於いて「朧」を註するものである。
底本:「日本の名随筆17 春」作品社
1984(昭和59)年3月25日第1刷発行
1997(平成9)年2月20日第20刷発行
底本の親本:「岡本かの子全集 第十二巻」冬樹社
1976(昭和51)年9月第1刷発行
入力:門田裕志
校正:林 幸雄
2002年12月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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