老主の一時期
岡本かの子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)お旦那《だんな》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)数人|宛《ずつ》で
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#疑問符感嘆符、1−8−77]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ます/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
「お旦那《だんな》の眼の色が、このごろめつきり鈍つて来たぞ。」
店の小僧や番頭が、主人宗右衛門のこんな陰口を囁《ささや》き合ふやうになつた。宗右衛門の広大な屋敷内に、いろは番号で幾十戸前の商品倉が建て連ねてある。そのひとつひとつを数人|宛《ずつ》でかためて居る番頭や小僧の総数は百人以上であつた。その多人数の何処《どこ》か一角から起つたひとつの話題が、全体へ行き渡るまでには余程の時間がかゝる。そしてその話題によほどの確実性と普遍性がなければ、多くはある一角、または半数、三分の一くらゐなところで、いつも立ち消
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