たしの分まで……」こういい直さないわけにはゆかなかった。女のこころは、決闘目《はたしめ》となって来た。かにかくに自分は一度伯母に会い、この詰《なじ》らないでは措けないものをうちかけてみたい気持に、迫られた。
 あのつん[#「つん」に傍点]とすまし、ぬけぬけと白膚を天に聳《そび》え立たしている伯母の山が、これだけは拭えぬ心の染班《しみ》のように雪消《ゆきげ》の形に残す。伯母にとっては父、自分にとっては祖父の執着未練な人型なるものを見度かった。それを見ることによって自分に一ばん懐しまれる性格の祖神にも会えるような気がした。
 母はやや老い、筑波の岳神の家では、働きものの水無瀬が主婦のような形になっていた。世間の男たちからは距てを構えられる女も、家の中の弟妹たちからは母よりも頼みとされ、親しまれた。彼等は外なぞから帰って来ると、まず「姉さまは」と、探し求めた。
 水無瀬はその弟妹の中の上の弟を語《かたら》って、三月の行糧を、山の窟《いわや》に蓄えた。姉の確りしたところで、いつも気を引立てられている勝気にも性の弱い弟は、この秘密で冒険な行旅を、姉の敢行力の庇《かげ》に在って、共々、行い味われた
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