から来るものであること、また、自分に山の祖神の嫡孫の気位を高く持たせ、それに相応《ふさ》わしい偉れた女に生い立たしめようとするのも、伯母に対するふた親の無意識の競争心から来るものであることを感付かないわけにはゆかなかった。
「駄目々々。偉くなることなんて。あたしに、さっぱりそんな慾はなくってよ」
 捨てるともなく誇りと励みに背中を向けかけると、ふた親が説く、山の祖神の偉さというものより部落の間の噂に遺っている山の祖神の偉からざる方面のことが女には懐しまれて来た。
 祖父さまは山中の猪の相撲場で、猪の仔の瓜わらべと遊び戯れているとき、猪の親に襲われ、牙にかかってお果てなされた。祖父さまは娘の福慈の神のつれない待遇を恨まれ、娘の神に詛いをかけたのみか、執着は、峯のしら雪に消え痕ともなって自形《じぎょう》の人型をとどめられた。それは稚気と、未練であるでもあろう。それゆえ、ふた親は自分に秘して語らない。しかし部落の土民たちがこれを語るときに現す、山の祖神に対する親しげな面貌よ。稚気と未練に含まれて、そこに何かあるに違いない。
 女は年頃になった。相変らずこの界隈の褒めものの娘であり、ふた親の自
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