る」
 といい放った。
 山の祖神の翁に、噎返《むせかえ》るような怒りと愛惜の念、また、不如意の口惜しさ、老いて取残されるものの寂しさがこもごも胸に突き上げて来た。
 翁はじっとしていられなくなって廻された独楽《こま》のように身体のしん[#「しん」に傍点]棒で立上った。娘をはたっ[#「はたっ」に傍点]と睨《にら》み、焦げつく声でいった。
「よし、こうなったら、やぶれかぶれ。おれはきさまを詛《のろ》ってやる。金輪際《こんりんざい》まで詛ってやる。今更、この期になってびくつくまいぞ」
 娘の冴えまさる美しい顔を見ると、その毒心もつい鈍るので翁は眼を娘から外らしながら声を身体中から振り絞るべく、身体を揉み揺り地団太《じだんだ》踏みながら叫んだ。
「福慈の山、福慈の神、おまえは冷たい。骨の髄に浸みるまで冷たい。えい、冷たいままで勝手におれ、年がら年中冷たい雪を冠っておるのがいいのさ。草木も懐かぬ裸山でおれ。凍るものから、餌食を見出して来やがれ」
 ぺっぺっぺっと唾を三度、庭に吐き去りかけたが、ふとそこに落ちている小石の一つを拾って手早く懐に納め、
「ざまを見よ。やあいやあい」
 といって出て行
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