は自然現象中より芸術の力によって美の抽象ということに画論を立てていますが、基礎にはカントの美学が影響を持っているようです。彼はだいぶ永い間ソルボンヌ大学でそれを研究していました。だが彼の画風は、理窟っぽいぎすぎすしたところは毛頭ありません。彼の聡明《そうめい》な物象の把握力、日本人特異の単純化と図案化。それに何という愛憐《あいれん》の深い美の象徴の仕方でしょう。私はいつも彼の画を見て惚々《ほれぼれ》とします。何と云っても一番人を融かすところのものは、彼の詩人的素質です。この素質が、彼の酷《きび》しいリアリズムを神秘にまで高めます。彼は今前衛画派の花形のうちで一番年少でありながら、一番期待と興味を持たれています。彼を見ると全く芸術家はテンペラメント一つだという気がします」
かの女はこれを旅先の知友が、滞在地で世話をする父兄に向って云うお世辞ともお礼心とも思わなかった。事実かの女は、近年美術季節毎に、権威ある美術批評を載せるラントランシジャン紙上に掲載される十指ほどの画家の中にむす子の名も混っているし、抽象派の機関誌にアルプとかオーザンファン、セリグマンとかいう世界的な元老の作品の
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