手堅く、画なども自分から売ったことがない。その点で美術関係の諸方面にかなり信用が蓄積されていた。そういう下地がある上に、彼は一旦物事を遣《や》り出すと、その成績に冴《さ》えて凄味《すごみ》が出るほど徹底した。
そんなことでK・S氏の作品展覧会は、逸作の奔走により、来着後数日ならずして、市中の最も枢要な場所に在るデパートに小ぢんまりした部屋を急造させて賑《にぎ》やかに開催された。
「こんな性急なことは、巴里のどんな有力な画家でも出来ないことです。巴里ではどんなに早くても三月はかかります」
K・S氏はむしろ呆《あき》れながら、歓《よろこ》びにわくわくして云った。何度も何度も礼を云った。
ホテルの一室で、立続けに電話をかけたり、紹介の文案を書いたり、訪問記者と折衝したりして、深い疲労と、極度な喫煙で、どろんとした顔付きになっている逸作は、強いて事もなげに言った。
「いや、お気遣いなさるな。あなた方はむす子の友人です」それから沈痛な唇の引き締め方をして、また事務に取りかかった。
かの女は、今こそこの父はむす子の幼時に負うた不情の罪を贖《あがな》う決心でいるのだと思った。ときどき眼を瞑《
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