的の創作に即するという様に昔の女性は何となく一つの新しいということの憧憬があった。その憧憬が此頃《このごろ》は地《じ》べた[#「べた」に傍点]に踵《かかと》をつけて来た。
かの子 それは時代が非常に便利になったから何となく新しくあろうという憧憬が青踏社時代の様に鬱勃《うつぼつ》としていません。たとえばその鬱勃としたものが、手軽に云えば髪形の上や服装の上などに通《は》け口が出来《でき》ているでしょう。また婦人雑誌を読めば現代語が出て、それを読めば自分の程度の新しさと一致する心よさがあり、見るものすべてが流通|無碍《むげ》になっただけ、それだけ女性全般の中に蓄積《ちくせき》されたものがない様に思います。それから一般的に新しい色彩が行き亙《わた》っているため、本質的な思想家や芸術家は既成《きせい》の人を除いてはぼかされ易《やす》い様《よう》です。すべての女が相当な新《あた》らしいテクニカル・タームを覚え青踏社《せいとうしゃ》時代の新しさは近代の女性には常識程度に普遍化《ふへんか》されて来た様です。
一平 一つは外国からの格別《かくべつ》新しい思潮《しちょう》が入らなくなった勢《いきおい》もあ
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