星
岡本かの子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)鼓豆虫《みずすまし》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)人間にいろ/\な
−−
晴れた秋の夜は星の瞬きが、いつもより、ずつとヴイヴイツトである。殊に月の無い夜は星の光が一層燦然として美しい。それ等の星々をぢつと凝視してゐると、光の強い大きな星は段々とこちらに向つて動いて来るやうな気がして怖いやうだ。事実太洋を航海してゐるとき闇夜の海上の彼方から一点の光がこちらに向つて近づいて来る。何であらうと一心にそれを見守つてゐると、突然その光の下に黒々とした山のやうな巨船の姿を見出してびつくりしたことがある。星を見詰めてゐると何か判らない巨大なものがその星を乗せてこちらに迫つて来るやうな気がする時もある。さういふ錯覚は一種の恐怖に似て神秘的な楽しさでもある。
星の瞬きは太古から人間にいろ/\な暗示や空想を与へてゐる。星によつて人間の運勢を占ふといふことは、古来、東西共通に行はれたことで、たとへそれに、科学的根拠があるにしても、そも/\の初めは太古の人間が、星辰の運行にいろ/
次へ
全7ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 かの子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング