、愛くるしい女の子だ。朝子は、ふと思い出して言った。「この女の子、この間言ったあんたのお嫁さんじゃないの」
 島吉は矢張り、うふふふふふと笑って、「奥さんにおじぎしないかよ」と、女の子に命令するように言った。女の子は朝子に、ぴょこんと頭を下げてから、島吉を見て、
「あ は は は は」
 と笑った。すると、島吉は矢庭《やにわ》に鋭い眼をして女の子を睨《にら》み込んだ。その眼は孤独で専制的な酋長《しゅうちょう》の眼のように淋しく光っていた。



底本:「岡本かの子全集4」ちくま文庫、筑摩書房
   1993(平成5)年7月22日第1刷発行
底本の親本:「丸の内草話」青年書房
   1939(昭和14)年5月発行
初出:「旅」
   1938(昭和13)年2月号
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2010年3月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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