もう少し行って御らんなさい。
そら、大粒の赤玉、白玉のメノーを七宝の青い葉茎がくっきりうけとめている、チューリップ!
ルビーと紫水晶のかけらのスイートピー。
くじゃくの彩羽の紋所ばかり抜いて並べたパンジー。
毛唐国の花だとさげすみながら、人は何と争って五月の花壇の真中に何よりも大切にこの宝石の様な花たちを、栽培するようになった事よ。さて、その花達に夜の間宿った露、朝日が射せば香わしいほのかな靄となって私達のもすそをしめらす。
目をとめてよく見ると、半開きの白ばらの花のかげ――肥料をやりたての根本の赤土の上に生れたばかりの小さいひきがえる[#「ひきがえる」に傍点]がよちよちしている。
お! 八百屋が、大きな玉菜とオレンジを運んで来た。勝手元の方へ知らせてやろう。
底本:「日本の名随筆1 花」作品社
1983(昭和58)年2月25日第1刷発行
1991(平成3)年9月20日第19刷発行
入力:渡邉つよし
校正:菅野朋子
2000年6月3日公開
2005年11月8日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://
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