決闘場
岡本かの子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)楡《にれ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)白|雉子《きじ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]
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ロンドンの北隅ケンウッドの森には墨色で十数丈のシナの樹や、銀色の楡《にれ》の大樹が逞《たく》ましい幹から複雑な枝葉を大空に向けて爆裂させ、押し拡げして、澄み渡った中天の空気へ鮮やかな濃緑色を浮游させて居る。立ち並ぶそれらの大樹の根本を塞《ふさ》ぐ灌木《かんぼく》の茂みを、くぐりくぐってあちらこちらに栗鼠《りす》や白|雉子《きじ》が怪訝《けげん》な顔を現わす。時には大きい体の割りに非常に素早しっこい孔雀《くじゃく》が、唯《た》った一本しか無い細い小路に遊び出て、行人の足を止めさせることもある。
此のケンウッドの森の真中の、約一丁四方程の明るく開けた芝生の中に、薔薇《ばら》の花園の付いた白亜の典雅な邸宅が建っている。ケンウッドの主であっ
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