其の来歴を少しでも知る人々に特種な空想と異様な緊張を与えるのだが、通りすがりの人に取っても、正確に一間|隔《お》き位いにつっ立って居る白樺の木立ちの物淋しい感じや、なんの変哲も無く一段と低くなった長方形の地面が、どういう場合に使った跡か一寸解し兼ねる処に、何んとなく恐ろしいような物珍らしさが手伝って我れ知らずじっと見入るように引きつけられるのであった。
此の決闘場へ近づいて来た三人組があった。
女一人に男二人、三人の互に異なった若い活気のため片輪のように何かぴったりしない組合せであった。真中に挟まれて女は何もかも可なりゆがんでしまって居た。頭も顔も体も、心までもゆがんでいた。ゆがんだ儘、女は二人の男を左右にくっつけてふらつくように歩いて来た。
二人の男達は、ロンドン大学の学生であった。ジョーンの方は人のよさそうな、少し鈍重な感じがする男であった。彼は真中の女に左腕を組まれて居た。金髪は彼の四角い頭を柔かく包んで居た。碧色の瞳は何処と信って確《し》っかり見詰めないような平静な光りを漾《ただ》よわせて居る。が、時折り突き入るように尖《とが》ってきらめくこともある。金色の粉を吹いたよう
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