向って進んで行こう」
 アイリスは少女らしい希望に亢奮して双の拳で辺りの空を切った。そして腰にも脚にも獲得の気概の弾力をこめて立ち上った。
 彼女は決闘場へ立寄りはしなかった。彼処の男達の闘争の成行も流石《さすが》に気にはかかったけれど、彼女はだんだん其処から遠退いて行った。最早や用の無い男達の戦う決闘場から少しも早く彼女は離れて行かなければならなかった。



底本:「岡本かの子全集2」ちくま文庫、筑摩書房
   1994(平成6)年2月24日第1刷発行
底本の親本:「夏の夜の夢」版画荘
   1937(昭和12)年11月20日発行
初出:「ペン」
   1936(昭和11)年11月号
入力:門田裕志
校正:オサムラヒロ
2008年10月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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