愚かな男の話
岡本かの子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)喋《しゃ》べり

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)相当|沢山《たくさん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)してやったり[#「してやったり」に傍点]
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       ○

「或る田舎に二人の農夫があった。両方共農作自慢の男であった。或る時、二人は自慢の鼻突き合せて喋《しゃ》べり争った末、それでは実際の成績の上で証拠を見せ合おうという事になった。それには互に甘蔗《かんしょ》を栽培して、どっちが甘いのが出来るか、それによって勝負を決しようと約束した。
 ところで一方の男が考えた。甘蔗は元来甘いものであるが、その甘いものへもって来て砂糖の汁を肥料としてかけたら一層甘い甘蔗が出来るに相違ない。これは名案々々! と、せっせと甘蔗の苗に砂糖汁をかけた。そしたら苗は腐ってしまった」

       ○

「或ところに愚な男があった。知人が家屋を新築したというので拝見に出かけた。普請《ふしん》は上出来で、何処《どこ》も彼処《かしこ》も感心した中に特に壁の塗りの出
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