る[#「こたへる」に傍点]くすくす笑ひです。
 先生は真赤な顔を抑へて、いつか教室から消えて居ました。
 溝口先生は、それから一度も学校へ姿をみせませんでした。
 二時間目事件が学校内の雑多な評判のなかからすつかり消えた頃、神経衰弱で東北の方へ転地して居た溝口先生が、なくなられたと学校へ聞えて来ました。が何故か生徒間では、こはいものにさはりでもするやうに、二時間目事件を口にするものはありませんでした。



底本:「日本の名随筆69 男」作品社
   1988(昭和63)年7月25日第1刷発行
   1991(平成3)年10月20日第7刷発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:渡邉つよし
校正:菅野朋子
2000年7月11日公開
2006年7月21日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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