やかになりて微笑み、少し苦情らしき調子にて。)あのわたしが待受けていましたのは、これまで幾度《いくたび》だか知れなかったのに、あなたは黙っていらっしゃったのですわ。それなのに、ひょんな時、出し抜けにこんな事を仰ゃるのですもの。(幕。)
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   [#ここから割り注]家常茶飯附録[#ここで割り注終わり] 現代思想(対話)


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太陽記者。こん度|私共《わたしども》の方で出すようになりました、あの家常茶飯《かじょうちゃはん》の作者のライネル・マリア・リルケというのは、あれは余り評判を聞かない人のようですが、一体どんな人ですか。
森。そうですね。私も好《よ》くは知りません。誰《たれ》も好くは知りますまい。あなたが御存じのないのも御尤《ごもっとも》です。これまでの処《ところ》では、履歴も精《くわ》しくは公《おおやけ》にせられていないのですから。
記者。しかし少しは知れていましょう。何処《どこ》の人ですか。
森。ボヘミア人です。それだから、現に墺匈国《オオストリア》の臣民になっています。八つの橋をモルダウ河に渡し
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