か、それは分からないのですが、製作をするとなっても、その辺《へん》を考えて見ると、妙なもんです。ツルゲニエフがあの虚無主義という語を始て使った小説ですね。あれの出たときの話を、あなたも御存じでしょう。あの虚無主義者と看做《みな》されている主人公の医学生に賛同しているというので、貴族|等《ら》は作者を攻撃する。虚無主義という名を附けられた青年連は、自分|達《たち》を侮辱したというので、これも作者を攻撃する。作者は板挟《いたばさみ》になったと、自分で書いていますね。あんなわけで、芸術品は客観的に出来ている方面から見れば、容易にこんな判断は附き兼ねるものなのでしょう。そこが面白いのではありますまいか。
記者。そこに価値があるのかも知れませんね。いや。いろいろ伺って難有《ありがと》うございます。さようなら。
森。ああ。一寸お待《まち》なさい。リルケの著作目録を上げますから。これです。
記者。難有うございます。それでは持って帰って拝見しましょう。
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    ライネル・マリア・リルケ著作目録
     (Rainer Maria Rilkes Werke.)
  題号                 種類 発行年 発行地      備考
Leben und  Lieder.            詩  1894  Strassburg i.S.  ――
Larenopfer.                詩  1896  Prag       絶板
Jetzt und in der Stunde unsres Absterbens.脚本 1896  家蔵板      絶板
Traumgekroent.              詩  1897  Leipzig      ――
Advent.                  詩  1898  同右       ――
Am Leben hin.               小説 1898  Stuttgart     ――
Zwei Prager Geschichten.         小説 1899  同右       ――
Geschichten vom lieben Gott.       小説 1900  Leipzig      [#ここから割り注]三板[#改行]1908[#ここで割り注
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