うな詩を總括して再びさきの獨斷を繰り返す。即ちこの難解な形式は彼の主觀の究極の表現である。この究極の表現はまた最後の表現である。即ち彼は自己の主觀のなかに苦しむことをこれらの詩をもつて終りとするであらうと。
「戰爭」「大軍叱咤」「壞滅の鐵道」「鯨」「腕」「腕」などは明らかに彼の目の前に展けた新しい視野を示してゐる。それは階級である。彼は自己を苦しめるものの正體に突き當つた。それを認識しはじめた。そしてこれは詩集「戰爭」のもつ最も大いなる意義である。私は彼の「意志」がこの道をどのやうに今後進んでゆくかを見守らう。それはわれわれの最も深い關心であらねばならぬ。
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眼の中には劍を藏つてゐなければならぬ。
背の上の針鼠には堪へてゐなければならぬ。
太陽には不斷の槍を投げてゐなければならぬ。
(「腕」より)
[#ここで字下げ終わり]
然り! 病床のなかに詩集「戰爭」をうけとつて私の感動は激しい。
[#地から1字上げ](昭和四年十二月)
底本:「梶井基次郎全集第一卷」筑摩書房
1999(平成11)年11月10日初版第1刷発行
初出:「文學 第三号」第一書房
1929(昭和4)年12月1日発行
入力:高柳典子
校正:土屋隆
2006年11月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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