してさきの蜜蜂を生かしてはゐる。物足りなく思ふもう一つは主人公の氣持が純眞ではあるが、その力み方に少し誇張したところが感じられることである。それはこの作品を汚すものではない。却つてある美しさを與へてはゐるが、この作品を深めるものではないと思ふ。
然しこの二つのこと、積極的な不滿ではない。何となく物足りなく思ふ。その原因をそこに求めたばかりである。
「さゝやかな事件」以外にこの人を知らなかつた私はこの作品によつて世評を欺かない作者のいい素質を見たと思つてゐる。
中谷がやることになつてゐたこの批評を、中谷が小説をかいたため書けなかつたといふので、編輯の淺沼から此方へ廻された。やりなれないことでもあり、同人の清水が京都から上京して來たり、氣を散らして、たうとう締切に迫られ充分なものが書けなかつた。作家諸氏や編輯者にお詫びをしなければならない。
最後に、新潮が新人號を出して同人雜誌の作家に書かせたことは時宜を得たいゝ企てゞあると思ふ。
それは文壇にとつても同人雜誌作家にとつてもよき刺戟となつたに違ひない。若しまた新人號がヂヤナリズムとして成功してゐたならば、それは新潮社にとつても同人
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