日本橋あたり
長谷川時雨

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)價《あたひ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)くう/\じやく/\
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 その時分、白米の價《あたひ》が、一等米圓に七升一合、三等米七升七合、五等米八升七合。お湯錢が大人《おとな》二錢か一錢五厘といふと、私は、たいした經濟觀念の鋭い小娘であつたやうであるが、お膳の前へ坐ると、頂きますとお辭儀《じぎ》をするし、お終ひになると、御馳走さまといつたり、さうでもないと、默つて一禮して、お膳を下《さ》げてもらうといつた、お行儀はよいが、世の中のことなんにも知らない、空々寂々《くう/\じやく/\》のあんぽんたんであつたのだ。
 しかし未曾有の國難、大國支那と戰ひがはじまるかも知れないといふ空氣は、店藏《みせくら》ばかりに圍まれてゐる問屋町《とんやまち》の、日本橋區内の、およそ政治には縁
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