水色情緒
長谷川時雨
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)向うへ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]しての
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)さら/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
鏡花先生の御作を私が好きだつた理由は、魂を無何有の郷へ拔いていつて貰へることでした。私達が心に感じて行ふ事の出來ない萬事を、先生の作中の人物は、小氣味よくやつて退けてくれる――勿論、そこにはすべてを魅了しつくしてしまふ大きな力があるのは分りきつてゐますが――そこが私たちの先生でなければならない所でした。花川戸の助六も、幡隨院の長兵衞も、男だから私たち女には溜飮を下げてはくれない、そこへ行つて先生は親玉です、親玉でした。もうなくならうとする――日本女性の中で特殊な、別だん大した値打はないかもしれないが、かんしやく玉を投つたやうな、竹を割つたやうな、さら/\と流れて行くやうな水、秋の空を通る風のやうな、
次へ
全6ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング