最初の外国保険詐欺
長谷川時雨
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)噛《かじ》って
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)御亭主|清水異之助《しみずいのすけ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)吉原雀というあだ名[#「あだ名」に傍点]
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この章にうつろうとして、あんぽんたんはあまりあんぽんたんであった事を残念に思う。ここに書こうとする事は、私の幼時の記憶と、おぼろげに聞き噛《かじ》っていただけの話ではちと荷がかちすぎる。
私はまことに呑気《のんき》な、ぽかんとした顔をしているが、私というものが生をこの世にうける前は江戸が甦生《こうせい》し、新たに生れた東京という都《みやこ》が、総《すべ》てに新生の姿をとって漸《ようや》く腰がすわったところであった。いたるところに文明開化という言葉がもちいられた。チョン髷《まげ》がとれて、腰の刀が廃された位の相違ではない。一般庶民が王侯と肩をならべられるようになったのだ。これはなんという急激な改革だかしれない。昨日《きのう》まで土下座《どげざ》の身分の者が、ともかく同等の権利
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