お墓のすげかえ
長谷川時雨
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)朝散太夫《ちょうさんだいぶ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)町人|袴《ばかま》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「もの」に傍点]
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一族の石塔五十幾基をもった、朝散太夫《ちょうさんだいぶ》藤木氏の末裔《まつえい》チンコッきりおじさんは、三人の兄弟であったが、揃いもそろった幕末お旗本ならずものの見本で、仲兄は切腹、上の兄は他から帰ってきたところを、襖《ふすま》のかげから跳《おど》り出た父親が手にかけたのだった。末子《ばっし》のチンコッきりおじさんが家督をついだ時分には、もうそんな、放蕩児《ほうとうじ》なぞ気にかけていられない世の忙《せわ》しさだった。
岡本綺堂《おかもときどう》氏作の『尾上伊太八』という戯曲の中に、伊太八という幕末の江戸武士が吉原の花魁《おいらん》尾上《おのえ》と心中をしそこなって非人におとされてから、非人小屋の床下を掘る場面があるが、あれを見るたびに私は微笑とも苦笑ともなづけがたいほほえみが突上げてくる。伊太八のは
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