木魚の顔
長谷川時雨
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)鼠小僧《ねずみこぞう》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)三光|稲荷《いなり》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
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鼠小僧《ねずみこぞう》の住んでいた、三光新道のクダリに、三光|稲荷《いなり》のあったことを書きおとした。三光稲荷は失走人の足止の願がけと、鼠をとる猫の行衛《ゆくえ》不明の訴《うったえ》をきく不思議な商業《あきない》のお稲荷さんで、猫の絵馬が沢山かかっていた。霊験《れいげん》いやちこであったと見え、たま、五郎、白、ゆき、なぞの年月や、失走時や、猫姿を白紙に書いて張りつけてあった。その近くに鼠小僧の隠れ家があったわけになる。
油町あたりの呉服商の細君であった祖母が、鼠小僧の人柄なぞをどうして知っていたのかと思ったら、そのころ祖母夫婦は、楽屋新道《がくやじんみち》――葺屋《ふきや》町、堺町、などの芝居に近い――の附近に住《すま》っていた。場処がらで気らくに暮していたと見え、近所の岡
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