ものは、両手をひろげてふせぐ、鬼は、あっちこっちと、両側を狙《ねら》って、長い列が右往左往すると、虚を狙って成功する――その時分、人|浚《さら》いが多くあって、あたしの従兄《いとこ》も夕方さらわれていったのを、父が木刀をもって駈《か》けていって、神田弁慶橋《かんだべんけいばし》で取りかえしたという話もあるので、そんな遊びもしたのであろう。夕方になると子供を外に出しておくのを危険とした。そんな事で、外出もやかましくいったのかも知れないが――
 釜鬼は、塀や壁を後にして、土に半輪《はんわ》を描き、鬼が輪の中に番をしていて、みんな下駄を片っぽずつ奥の方へ並べておく。それをチンチンモガモガをしながら、輪の中へ取りにゆくのである。大挙して突進すると鬼が誰をつかまえようかと狼狽《あわて》る、それが附目《つけめ》なのである。下駄が一ツ二ツ残ると、それからが駈引《かけひ》きで面白く興じるのだ。
 ――瓢箪ぼっくりこ――つながってしゃがんで、両方に体を揺《ゆす》って歩みを進めて、あとの後《あと》の千次郎と、唱《うた》いながらよぶと、一番|後《うしろ》の子が、ヘエイと返事をして出てくる。問答がすむと、その
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