たのだろう大きな声で祖母をよんだ。祖母はニコニコして後からお鳥目《ちょもく》を払って歩いて来た。
 お其のうちは八百屋をやめて焼芋屋になった。店の大半、表へまで芋俵が積まれ、親父《おやじ》さんは三つ並べた四斗樽のあきで、ゴロゴロゴロゴロ、泥水の中の薩摩芋《さつまいも》を棒で掻廻《かきま》わした。大きな、素張《すば》らしく美事な焼芋で、質のよい品を売ったので大|繁昌《はんじょう》だった。三ツの大釜《おおがま》が間に合わないといった。近所が大店ばかりのところへ、遠くからまで買いにくるので、いつも人だかりがしていた。一軒のお茶受けにも、店の権助《ごんすけ》さんが、籠《かご》をもって来たり、大岡持ちをもってくるので、一釜位では一人の注文にも間にあわなかった。忙しい忙しいとお其はいって、鼻の横を黒くしていた。で私の遊び合手《あいて》は、私《あたし》をも釜前《かままえ》につれていった。冬などは、藁《わら》の上にすわって、遠火《とおび》に暖められていると非常に御機嫌になって、芋屋の子になってしまいたかった。だが、困ったことに家の構造が、角の土蔵なので、煙のはけばに弱らされていた。住居にしている二階の
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