優高級論をとなへてゐた。今よりももつと高給を彼等に與へよといふのであつた。
 その場にもつとも多く――殆んどといつてよいほどゐた俳優諸氏をよろこばせるための資本家のお上手と見ればなんでもないが、また、おだてられて、さうだと思ふ役者もあるまいが――。
 役者全體がシエクスピアになるものではない。最も俳優が、全然違つた方面から巣立つたらば知らないことだが――だが、それほどの人材ばかり出たら、傀儡《くわいらい》となつて叫び狂ふ自己の職業に滿足するかどうか?
 小林氏もまた、大劇場をもつ抱負《はうふ》のある事を述《の》べられた。これは直ぐにも實行力のある人の仕事であるから、確固たるもので、早晩實現されるものに相違ない。願はくば、消滅した國立劇場の如く、無代《たゞ》ともゆくまいが、安くしてください。但し俳優高級論とは一致しまいが――
 これは小林氏にお願ひする。
[#地から2字上げ](「女人藝術」昭和四年二月號)



底本:「桃」中央公論社
   1939(昭和14)年2月10日発行
初出:「女人藝術 昭和四年二月號」
   1929(昭和4)年2月
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2008
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