むぐらの吐息
長谷川時雨

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)消滅《せうめつ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ただ[#「ただ」に傍点]で
−−

 十二月廿五日夜、東京日日新聞主催の「大東京座談會」の席上で、復興の途上にある大東京は、最初の豫算三十億の時から十億に削られた時まで、一千萬圓の國立劇場建築費が保存されてあつたが、終に最後の七億になつて消滅《せうめつ》してしまつたといふことを、復興局長官の堀切善次郎氏によつて語られた。
 讀もの中心の座談會では、もとより長講を誰しもが愼しんで避けてゐる。と共にあまり專門的な質問で時間を逸し、面白くない記事をよぎなくする事も失禮である。で、ぐつと安《やす》く――三十錢位で見せてもらはなければ、國立劇場が出來ても仕樣がない、とあたしは言つた。堀切氏も同感だといはれ、尾佐竹猛氏は、一體國立劇場といふのは無代《むだい》で見せるものではないかと言はれた。
 國立劇場といふものが無代《むだい》のものかどうかを知らないあたしは、各國の國立劇場がどういふ組織のものか――寡聞《くわぶん》なあたしはこん
次へ
全11ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
長谷川 時雨 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング